ANOTHER 1965

もし、鉄平と朝子が結婚していたら。

『海に眠るダイヤモンド』を見た女将が作った、もう一つの1965年

一島一家のコスモス畑と海に浮かぶ軍艦島
一島一家の畑に咲くコスモス。その向こうに軍艦島を望む。

※この記事には、ドラマ『海に眠るダイヤモンド』の物語に触れる記述が含まれます。

二人に、こんな未来があってほしかった

軍艦島を舞台にしたテレビドラマ『海に眠るダイヤモンド』。
retro48長崎の女将は、この作品を毎週楽しみに見ていた一人のファンでした。

高度経済成長期の端島で懸命に生きる人々。その中でも、幼い頃から互いを知り、少しずつ心を通わせていった鉄平と朝子の物語に、女将は強く心を動かされました。

けれども、二人が思い描いた未来は実現しませんでした。
ドラマを見終えたあとも、女将の心には一つの思いが残りました。

「もし、鉄平と朝子が結婚していたら、どんな家庭を築いただろう」
「もし二人が軍艦島を離れ、長崎市街地の団地で暮らし始めていたら、どんな部屋を選び、どんな家具を置いただろう」

その“もしもの未来”を、一つの部屋として形にしたのが、retro48長崎の「220|かすてら部屋」です。

1965年、軍艦島から長崎の団地へ

かすてら部屋には、1965年に結婚した若い二人が、軍艦島から長崎市街地の団地へ移り、新婚生活を始めたという物語があります。

これは、ドラマの部屋や登場人物の生活を忠実に再現したものではありません。
女将がドラマから受け取った思いを出発点に、軍艦島で実際に暮らした方々の話や、当時の住宅、家具、家電、生活文化を参考にしながら、「二人にこんな未来があってほしかった」と想像して作った部屋です。

島で身につけた暮らしの工夫を携えて、新しい団地へ移った二人。小さな台所で食事を作り、配膳窓から料理を渡し、足踏みミシンで衣服を繕い、新しくそろえた家具を少しずつ部屋になじませていく——。
かすてら部屋では、そんな1965年の新婚生活を想像しています。

かすてら部屋には、二人の物語の出発点を忘れないために、大正時代の国土地理院地形図を飾っています。端島を拡大した部分には、島の建物とともに炭鉱を示す地図記号が残されています。現在の廃墟としての姿だけでなく、そこに仕事と日々の暮らしがあったことを伝える一枚です。

大正時代の地形図に描かれた端島と炭鉱の地図記号
端島部分を拡大すると、島内の建物と炭鉱を示す地図記号を確認できます。出典:国土地理院発行地形図(端島部分を拡大して掲載)。

220号室に飾られた端島の地形図を見る

物語の続きを、泊まって想像する

部屋に置かれた鏡台、文机、足踏みミシン、枕屏風。作り付けの棚が残る台所と、居室につながる配膳窓。
それぞれは、単なる「昭和風の装飾」ではありません。

朝、二人はどのような会話をしたのだろう。
仕事から帰った鉄平を、朝子はどんな料理で迎えただろう。
休みの日には、二人で長崎のまちをどのように歩いただろう。

女将が想像した暮らしの断片を、家具や道具、部屋のしつらえとして重ねています。

ドラマを見た方には、鉄平と朝子にあったかもしれない、もう一つの時間を思い浮かべながら過ごしていただけたらと思います。
ドラマを見ていない方にも、軍艦島で暮らした若い二人が、結婚を機に新しい団地生活を始める物語として、この部屋を楽しんでいただけます。

ファンの思いから生まれた「一島一家の畑」

『海に眠るダイヤモンド』に心を動かされ、その思いを現実の場所にしたのは、私たちだけではありません。

ドラマの最終回には、コスモスの向こうに軍艦島を望む、忘れがたい風景が登場します。

その景色を本当に長崎に作りたい——。同じドラマを愛する人たちと地域の皆さんの手により、野母崎に「一島一家の畑」が生まれました。

色とりどりのコスモス越しに望む軍艦島
色とりどりのコスモス越しに見える軍艦島。「一島一家の畑」から撮影。

女将も同じ作品のファンとして、この活動に深く共感しています。

作品を見て心に残った風景を、実際の長崎で形にした「一島一家の畑」と、二人の“もしもの暮らし”を団地の一室にした「かすてら部屋」。
形は違っても、どちらも作品への思いから生まれました。

タイチ寿司で出会った、端島の記憶

ドラマの銀座食堂で働く竹男。そのモデルとされる木本太市さんは、長崎市内で「タイチ寿司」を営んでいます。

木本さんのお父様は、かつて端島で「厚生食堂」を営んでいました。ドラマの物語と、端島で本当に営まれていた食堂の記憶は、木本さんへと受け継がれています。

タイチ寿司のカウンターに立つ木本太市さん
タイチ寿司のカウンターに立つ木本太市さん。お寿司とともに、端島から続く食堂の記憶に触れるひととき。

私たちはタイチ寿司を訪ね、木本さんと直接お会いすることができました。

ドラマをきっかけに軍艦島へ関心を持ち、実際に島で暮らした人や、その記憶を受け継ぐ人と出会う。
画面の中で始まった物語が、長崎を訪れることで、現実の人や場所につながっていきました。

木本さんには、今回の出会いと写真を記事にすることについて、ご了承をいただいています。

軍艦島を訪れた、その夜に

軍艦島を訪れ、島に残る建物を眺めるだけでは分からないものがあります。

そこには仕事があり、食事があり、恋があり、家族がありました。
島を離れた人たちにも、その後の人生と暮らしが続いています。

かすてら部屋は、軍艦島そのものを再現する場所ではありません。
軍艦島で生きた人々が、その後、長崎でどのような暮らしを始めたか。そして、鉄平と朝子にもあったかもしれない未来を想像するための部屋です。

軍艦島を訪れた旅の続きを、長崎の団地の一室で過ごしてみませんか。

※本記事および「かすてら部屋」は、ドラマ『海に眠るダイヤモンド』に心を動かされた宿の女将が、一人のファンとして独自に構想・制作したものです。番組、制作会社、放送局、出演者その他の関係者による公式な提携、監修、協力または公認を受けたものではありません。
※番組の画像、映像、ロゴ、台詞、出演者・登場人物の画像は使用していません。

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